大判例

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東京地方裁判所 昭和22年(ワ)41号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

本件の原告は前掲判決の原告と同一でありその主張も從業員が二十年間使用料を支拂つた場合は家屋とその敷地を讓渡する特約があつた點を除いては前掲判決と同樣である。(但し被告等の内二名に對しては單純な不法占有を理由とする。)被告等は「本件契約は家屋及び敷地の分讓月賦辨済契約であり、退職を解除條件とするものではない。仮りに退職を解除條件とするものとしても、その場合の退職とは無斷退職又は正當な解雇による退職に限定さるべきであるが被告等の退職はこれに該當しない」と爭つた。本件契約は單純な賃貸借ではなく前掲判決理由中の「代金分割拂の方法で讓渡する契約」(同判決ではこの契約の存在に徴しても該賃貸借が退職を解除條件とするものであることは認められないとした)と同一の物の樣であるが、本件では裁判所は本件契約は明示の特約がなくても當然退職を解除條件とするものと解し、又本件契約のように身分關係の存在を前提とし營利を目的としない家屋の有償使用契約には借家法の適用なしとし、なお被告等の退職は本件契約の解除條件である退職に該當するものと認め原告の請求を認容した。

(理由)

判示事項一「原告會社は、この資金を借り入れ勤務者の福利厚生施設の一翼として社宇を建設しこれを勤務者に一定の使用料で一定期間使用せしめ所定期間の使用料を滯りなく支拂つた者には社宅とその敷地の所有權を無償で讓渡する制度を設け一は永年勤続者に生活安定の途を拓くと同時に他はこれによつて勤務者の永年勤続の氣風を作興しようと考へこの目的で(中略)右社宅の分讓貸付規程(乙第一號證の二)を設けて先づその第一條で社宅は勤務者に限り貸付分讓することを明かにし更に社宅の貸付分讓についてこれ等は右規定に基いて行う事を一般的に宣言すると共に權利、移轉、修繕費の負擔、契約解除等の諸件に關し定型化した賃貸借契約證書と題する書面を作成し社宅の使用契約は總べてこの規程及び契約證書によつて取り結ぶこととしたことを認めることが出來これが反證はない。果して然らば右規程及び契約證書による社宅使用契約は原告會社とその勤務者という一定の身分關係(雇傭契約上の)の存在を前提とするものであること明らかであるから契約の際に特にその旨の明示の特約がなされると否とに拘らず契約當事者は使用者がその使用に係る社宅及び敷地の所有權を所得する(括弧内略)以前にその身分を失う場合には使用契約を當然に終了せしめる換言すればその身分の消滅を解除條件とする意思でなされるものと認めるを相當とする。

判示項事二「借家法は、とかく総ての家屋の有償使用契約にその適用があるもののように解され易いけれども一概に家屋の有償契約といつてもその中にはいろいろの態樣があり大別すればその使用料が家屋の使用と對価關係にあるものすなわち一般の社會觀念において經済上の取引と見られるものとそうでないものとがあり借家法はその前者を規律することを目的として制定された法律であるから本件各契約のように身分關係の存在を前提とし且つ營利を目的としない家屋の有償使用契約にはその適はないものといわなければならない。」

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